いろんなジャム作りには、食材が新鮮で豊富な田辺が最適です(龍神)
- インタビュー記事
- 龍神エリア
2019.03.04
- 田辺市に移住されるまでの金丸さんの経歴を教えていただけますか。
- ここに移り住むまでは東京暮らしで、東京ステーションホテル、東京駅の地下のレストランでコックをしていました。
元々ずっと地方に移住したくて、理由としてはその土地の食材を使って、瓶詰か真空パックを売りにした加工品を作りたいと思っていたんですね。 - それで和歌山が気に入って移住してきたのですが、それに向けてそれまでイタリア料理をずっと学んできてイタリアに留学してその技術を習得して、イタリア食材の専門店に居たりとか、三越の本店で働いていましたね。
- ずっと長く東京でお暮しになっていたのですね。
- そうですね、世田谷でずっと生まれ育ちました。
- 金丸さんが移住先に和歌山を選ばれたきっかけは?
- 元々は長野か熊本のどちらかに移住しようと迷っていたのですが、長野は雪国なので永住しようと思ったら住んだことのない雪国だし、妻も私も雪国の体験がないのに住み続けることが出来るのかどうかがちょっと不安だったので、保留にしたんです。熊本は和歌山と同じような感じで、温暖で観光地としても景気も良くて、福岡等から海外観光客も沢山流れてくるので、インバウンドも多くて、しかも若い事業者がどんどん増えてきて、それと一年中果物を作っているので、商品にするジャムも作ることができるし、食べ物を作るのにも野菜とかお肉とか色々と作っているので、いいなと思っていたのですが、妻の母に凄く反対されたんです。
「遠すぎる!行ったことない!」って・・・「いや、お義母さんは行かなくて大丈夫ですよ」と言ったのですけれども(笑)「そんな田舎!」って言われて。別にそんなに田舎ではなかったんですけど、ものすごく反対されちゃって、これは丸め込むのは無理だなぁって(笑)・・・じゃぁ仕方なく一回 熊本も保留にしようって。 - それで、他の地域も検討してみようと思ったところで、職場だったステーションホテルから一駅先に有楽町があって、その有楽町にふるさと回帰支援センターというところがあるんです。そこが移住者の案内情報、県の案内所があって、仕事の休憩時間にそこにたまたま足を運んだら、和歌山の担当の人がパンフレット持ってきて移住をご検討ですか?と。
「そうなんですけどまだ決まっていないんですよ」と言ったところ、「来週セミナーがあるので見にきませんか」って・・・ちょうど休みだったので行ってみたら、田辺市の案内をしていただいて、すごく魅力的だったので一回視察に行ってみようって妻と一緒に視察に来てみたらとても気に入ったんです。飛行機も1時間で東京の羽田まで飛ぶし、大阪まで車で2時間で行くし、環境は良いし、食材は手に入るし・・・和歌山は果物が豊富ですし。しかも環境イメージも良くて、こりゃいいなと思い、家も良いところが見つかったので、妻と移住しよう!ってなって、それでここに決定しました。 - それまで金丸さんは、和歌山県や田辺市はご存知でしたか。
- 和歌山自体は知っていました。また田辺は果物が豊富だというのは知っていました。
私が小さい頃に父が田辺市に取材にきたことがあるんですが、「きてら」という直売所があって、そこは田辺市の上秋津という地域なのですが、そこだけで年間87種の柑橘類を作っているんですよ。通年通してどの時期でも柑橘類が手に入るという所に取材に行った話を父から聞いていて、果物を少量多品種で作っている地域だというのを久々に思い出して、これは良いかもしれないと思ってたんです。 - 実際に視察をされ、龍神地域にお住まいになられているのですが、住まわれて何年になりますか?
- もうすぐ三年になりますね。
- 当初思っていたイメージと、実際こちらに住んでみられてからの田舎暮らしのイメージと言うのはいかがですか。
- 特別不安がなかったので、イメージ通りと言えばイメージ通りなんですけど、夢見がちと言えば夢見がちなのかな。良い暮らしができると思っていて、その通りに良い暮らしができたので、特に問題が何もなくて・・・
- 金丸さんにとっての良い暮らしと言うのは、ご自身の価値観で言うとどういう暮らしですか。
- 自然環境が良くて、住み良い大きな家、車での生活、物価が安くて、ご近所付き合いもちゃんとあって。そういうのが理想の暮らしかな。で、食材を常に現地で手に入れたものを家族で食べる。というのが私の理想の暮らしですね。
- 東京で生活していた暮らしとはかなり違いますか。
- 買い物は車で行くので楽だし、田辺市街地の方には大きなスーパーや大きなホームセンターとか、服屋さんがあってそういう所は買い物していて楽しいし、便利で快適ですね。一つだけイメージと違ったのは、東京でインターネットで今まで買い物していたときと同じように こっちでもインターネットで買い物したら、注文してから同じように次の日の朝には届くので。それがなんか意外でびっくりしました。(笑)そう考えると あまり東京と変わらないなと思って…暮らしが便利になって、大きな家と車での生活ができるようになって、インターネットでの買い物も都市部と変わらないというのが、田舎にきて正解だなと思いましたね。
- 総じてメリットの方が大きかったと。
- デメリットは今のところ特にこれといってないかな。唯一あったのは、飲みに行けないということですね。車で帰ってこれないので。泊まりに行かなければいけないとか、送迎を頼まなければいけないとか。
- 都会から移住を考える方にとって、色々と心配な点で、病院や、お子さんの教育環境というのがあると思うのですが、そのあたりはいかがですか。
- 教育に関してはバスが迎えに家まで来てくれるので、とても良いですね。
雨だろうが寒かろうが、暖房も効いていて、夏はクーラーも効いていて、子供たちも傘もささないで、雨が降っていても。バスが家の前に来てくれるので、それで校門の前で降ろしてくれるので心配もないし、寄り道もしないで帰ってきますね。それに学校の教育は良いですよ。校舎も龍神村の紀州杉をつかった木造の建屋で、給食室も教室と別れていて、ちゃんと給食食べるような所で皆で食事してアツアツの給食が出てきて、とても贅沢な食事を子どもたちはしてますね。 - それから、急病のときは消防署の分署がありますので、救急車はすぐに来てもらえると思います。消防車でも救急車でも。大きな病院へは街まで車で40分から1時間位です。でも東京と違って、人口が少ないこともあり、1時間以内で必ず診てもらえます。必ず受け入れしてもらえるということを考えると、こちらの方がメリットとしては大きいかなと思います。
都市部のように病院はあっても受け入れ拒否とかいうような事はこちらではまずないと思うので。龍神地域は山奥なのでドクターヘリも来てくれますので、そういう部分では特に心配はないです。 - 東京から移り住み、3年近く この地域で暮らしてこられて、自分自身が当初描いていたタイムスケジュールといいますか、達成度合いは、どのように捉えていますか。
- これは思っていた以上に淡々と段取り良く進んでいて、自分でもびっくりしている位で・・・もっとなんか時間がかかるかなとかお金が必要かなとか。
そんな風に考えていたのですが、一応自分での予定としては、この期間内には終わらせようとか、この期間内にここまでやろうとか、あるのですが、予想を上回ってスピーディに早く事が成されていってますね。
移住してから8か月くらいでお店も自分で改装して作ってオープンできましたし、住んで1週間後にはもう地元の商工会に所属してました。なので割とすぐに馴染めましたね。 - 2年目には、商工会に入っていたので、東京のビッグサイトのイベントとかに出店しに行ったりとか。先々月ここなら、すぐ近くに家を買ったりとか・・・家買うなんて10年後とか20年後とかに思っていたので、住んでまさか2年後に家を買うとは思ってなかったです。
特別稼ぎがいっぱいあるわけでもなかったのに・・・ここに来るまでは、なんか東京と同じ感覚で、家って3000万円、4000万円くらいかなという感覚だったので、ローンなんて組めないだろうと考えていたのですが、ここは、土地が安いから上物だけ考えれば良いので、全然感覚として価値観が違います。
中古の物件とかもとても安く売りに出たりするので、そういった部分では思っていたのと違いましたね。2,3年しか経っていないのに、もう家を持ったりとか店を持ったりとか。赤字もなく。悠長に過ごせているので、無事に過ごせています。お蔭様で。 - 家を取得したということは金丸さん自身、この地で、新たに何かしたいということが有るのでしょうか。
- たまたま 近くの場所に良い家が見つかったので買ったのですが、そこではこれから宿を始めたいんです。一棟貸しの貸し別荘みたいな宿を運営していこうと思っています。
老後はここで自分が買った家に住んでいきたいな、平屋の住宅に住みたいなと思ってますので、歳をとってきたらそういったところじゃないとしんどくなってくるので。そういう意味で、今から買って宿として運営して、老後はその家に引っ越そうかなと思っています。 - お伺いしていると非常に地元にもすぐに溶け込まれたという印象がありますが、商工会や、地元との方々との接点というのは大事でしょうか。
- 大事ですね。そういうのは大事にした方が良いと思っています。
自分から積極的に、引っ越してすぐご近所様に挨拶は当然するのですが、それだけじゃなく、住んでから1週間後ぐらいに地区の集まりみたいのがあるので、地区会に顔を出して家族で自己紹介して、引っ越してきたので宜しくお願いします。と挨拶をして、その年の秋には地元の祭りや収穫祭にも参加したりとか。
三年間毎年参加していますね、家族で。忘年会とかもあるんです地区の。そういうのも参加したり、クリスマス会も他所の地区でやったりするんで、積極的に参加したりとか。そういうのはとても大事ですね。 - 皆さん長いことこの地域に住んでいて、これからその方々が亡くなってもその方々の息子さんや娘さん、お孫さんらがまた住み続けるんですよね。そうすると新しく来た人間が、挨拶もしなかったり顔が見えないと、皆さんとても不安なんですよね。例えるなら、小学校や中学校に転校生が来てその子が全く挨拶もなく自己紹介もなく、ずっとあたかも当たり前のように一緒に授業を受けているみたいな。そういう気持ち悪い状態になるんですよね。
会社だったら新しく入社してきたのに、誰にも声を掛けないで当たり前のように仕事をしているような状態になっちゃうので、そうするとやはりご近所付き合いはよくないし、周りの人も不安になってしまうと思うんです。
あの人ってどんな人なんだろうって。挨拶も来ないって一体どんな人なんだろうって。ですので、そういうところは積極的に自分から行った方が良いなと思ってやってます。 - 移住者を受け入れる側の龍神地域の方々の印象というのはいかがですか。
- 皆さんすごく優しくて、お隣さんとかもしょっちゅうお野菜とかをくれるんですよ。ですので、うちは代わりにパンを焼いて持っていったりとか、ケーキ作って持って行ったりとか。それに田舎に住んでいると草刈りが必要になってくるんですよね。そんな時は草刈り機を借りに行ったりとか。皆でバーベキューするときも延長ケーブルを借りに行ったり・・・それに、ここは裏に山があって、谷から水を引いて皆で使っているんですが、地元の人は無料なんですよね。なので洗車するときとか沢山洗い物をするときとか、勝手に使っていいよって言ってくれるので、借りに行ったり。
お祭りに初めて参加した時なんかも、地区の偉い方が、我々家族が三人増えただけなのに「今年は人数が多いなぁ!」とか言って。三人してか増えてないんですよ。でもほんとうに嬉しそうにしてくれて。だから皆すごく歓迎してくれているので、本当に嬉しいですね。 - そうやってまめに挨拶して仲良く自分からしようっていう姿勢でやっていれば、皆さん向こうからも積極的に来てくれてどんどんなんか持ってきてくれるんですよ(笑)
私が知らない間に野菜とか置いてくれていることもあって、お礼が言えない時もあります。誰が持ってきてくれたのかわからなくて。あの人かな~、という人に何軒か聞いても違ったりして・・・で、結局誰かわからなかったこともあります(笑) - すっかり龍神地域での生活に馴染まれている金丸さんだと思いますが、ご家族の声はいかがですか。
- 妻は元々田舎暮らしに特に反対がなくて、興味津々ですね。妻は東京の目黒区の出身で、実家が目黒にあるのですが、田舎というのを全く知らなかったので、かえって抵抗がなかったと言っていました。未知の世界だから、行ってみたいという感じで。娘はむちゃくちゃブーブー言ってました。
都会の娘だし、という感じで。でもあっと言う間に馴染んでましたね。中学校の入学に合わせて移住して来たのですが、すぐに友達を作って遊んでました。 - 東京23区のど真ん中から、こちらに来て、お子さん自身のカルチャーショック的なものは見受けられましたか。
- むしろそのギャップとかを新鮮で楽しんでいるようです。都会との文化の違いとか、環境の違いとか。そもそも言葉が関西なので全然違っていて、そういう所も楽しんでましたね。
- 龍神地域には色々な方が移住されていらっしゃいますが、その方々とのご交流というのもありますか。
- ありますね。別にわざとそうしているわけじゃないですが、自然と皆なにか移住者同士の人は仲良くする、しょっちゅう皆で集まって飲み会したり。
移住者だけで集まろうとしているわけではないのですが。なんとなくそうなっちゃう時は多々あります。なんだろう、なんとなく落ち着きやすいのかな。同類っていう感じになるんですかね。
地元の人と集まるときは地元の人達だけと集まって飲み会したりとか、移住者達の場合は移住者の人達ばっかりで飲み会しますね。結局 話題が合うのでしょうね、同じ体験をしてるから。ここはこういうところが不便だよね、とか東京のこういうところが嫌だよねっていう話をしたりとか(笑)そういうのをよくしますね。なんとなく皆でよく集まって。 - ここで暮らしているので、物の見方とか価値観が移住してきた方々は、似ているのでしょうか。
- やはり地元に元々住んでいる人達はずっとこの環境にいるので、特に自然環境とかも有り難くないし、例えば谷水が流れているところに感動したりしないんですね。当たり前のものなので。綺麗な水が出てるのが・・・水道を捻ったら水が出るのと同じような感覚で当たり前なんですよね。食べ物にしても、採れたばかりの土の付いた大根とかに私達は単純に感動したりする時があるのですが、地元の方々にとっては別になんてことないんです。
例えば、スーパーで魚が安いとかも。それはもう当たり前の感覚なので・・・なんかそういうところは都会から移住した者にとっては当たり前じゃない、すごいことなんですよ!!って(笑)何気ないことに感動することがいっぱいあるんですよね。 - 最後に移住をしたいと思われている方に金丸さんから何か伝えるとすれば?
- 私は予め自分の条件に合っているかどうかを吟味して、住み良さそうだなと思ってここを選んだので。これから移住をしようと考えている方にも、ちゃんとやはり選んで考えて移住してほしいですね。例えば子供がいるのであれば、中高生になったときに学校はどんなところで、通うのだったらどうするかとか。
さっき言っていたような病院までは、どの位の距離感でどうなのかとか。ペットを飼うんだったらペット用の病院が自分の満足のいくところが近場にあるのか。もしくは自分がピアノをやっているとか。子供に何か習い事をさせたいとか、その先生が居るのか、そういうことを学べる環境が身近にあるのかどうかとか。
そうしたことは予め調べればわかることなので、ちゃんと調べてきた方が良いのかなと思います。後はその住む地域の物価なども、上下するから一口にはわかりませんが、現地の人に聞いても良いし、一定の価格というのはやはり決まっているので。 - ずっと住むので、現地のスーパーとか、普段買い物に行くところの物価はどうなのか。今後ずっと住むと思っているんだったら予め調べておいた方が良いです。簡単にわかることなので。
- きちんと自分の何年後か先の姿というのを思い浮かべるというのが大切なんですね。
- 大事ですね。何も調べないで、来てから分かったんですけど、という方が結構居て、また出ていくという方も居るんです。
例えば子供がいた、もしくはできたとかで、小学校に上がったら生徒が少なくて。だからこの地域から出て行くみたいな。だからそれは、最初から分かることなので、調べといた方が良いですよ、と思うんですよね。
ただ憧れだけでなくて、きちんとこの地で暮らしていくには大事なことだと私は思います。